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ホーム研究が示していること

現在バイアス:将来の自分が、いつも今の自分に負ける

来月から貯めようと決めて、来月になると同じ決断をまた来月に送る。これは意志の弱さの話ではなく、時間の割引の仕方に一貫性がないという、研究上よく知られた性質です。米国のジム会員の実データは、人が自分の将来の行動を体系的に楽観視することを示しました。以下の研究はいずれも米国の参加者とデータに基づくもので、日本の家計を対象にしたものではありません。それでも、対策の方向はそのまま使えます。

割引の仕方が一貫していない

経済学の標準的な想定では、人は将来の価値を一定の率で割り引きます。ところが実際の選択を見ると、目の前の一日と一年後の一日の扱い方がまるで違い、遠い将来同士の比較では冷静なのに、いま対来週になると急に今が強くなります。この不整合を扱った理論のひとつがオドノヒューとラビンの分析で、費用が先に来る行動、たとえば家計簿をつける、固定費を見直す、貯金を先に取り分けるといった行動は、先延ばしされやすいと整理されています。逆に、報酬が先に来る行動には早く飛びつく。どちらも同じ性質の裏表です。

自分の将来の行動を、人は楽観視する

理論だけではありません。米国のフィットネスクラブ3施設、会員7752人、3年分という実データを使った研究があります。月額定額の契約を選んだ会員の来館回数は月平均4.3回にとどまり、都度払いの回数券を使ったほうが支払いが少なくて済む水準でした。つまり多くの人が、自分は週に何回も通うという前提で契約し、その前提が外れても契約を続けていたということです。著者らは、将来の自分の行動に対する過信と、解約手続きの先延ばしを主な説明として挙げています。家計のサブスクリプションが減らない構造と、まったく同じ形をしています。

この研究は米国のデータであること

念のためはっきり書いておきます。ここで挙げた二つの研究は、いずれも米国の経済学者による理論と、米国のフィットネスクラブの会員データに基づくものです。日本の家計や日本の消費者を対象にした調査ではありません。ですから「日本人は年間これだけ無駄にしている」といった数字をここから作ることはできませんし、作るべきでもありません。持ち帰れるのは金額ではなく仕組みのほうです。費用が先に来る行動は先延ばしされる。将来の自分の行動は楽観視される。この二つは、対策を設計するには十分な材料です。

対策は、決断の回数を減らすこと

現在バイアスへの対処として研究が示唆してきたのは、意志を強くすることではなく、意志を必要とする場面を減らすことです。給料日に貯金を先に取り分ける先取り貯金は、その典型です。月末に「残ったら貯める」と決めると、月末の自分がその決断をすることになりますが、給料日に先に移してしまえば、決断は月に一度で済みます。袋分けも同じ構造で、月初に費目ごとの金額を決めてしまえば、レジの前で毎回判断する必要がなくなります。決めるのは今の自分、実行するのは仕組み。この分業が現在バイアスへの実務的な答えです。

出典

以下の出典はすべて実際に取り寄せて確認しています。内容は、出典が述べているとおりに書いています。

よくある質問

意志が弱いということですか?

違います。ここで扱っているのは、人の時間の割引の仕方に一貫性がないという性質で、性格の問題として説明されているわけではありません。だから対策も、気合いではなく仕組みの側に置きます。決断の回数を減らせば、意志の量に関係なく結果が変わります。

サブスクリプションを減らすコツはありますか?

一つずつ判断すると、たいてい全部残ります。いま契約しているものを全部書き出して合計を出し、合計を見てから残すものを決めてください。ジムの研究が示しているのは、続けるかどうかの判断が先延ばしされやすいということなので、判断する日をカレンダーに置いてしまうのが有効です。

先取り貯金はいくらから始めればいいですか?

金額よりも、続く額であることのほうが効きます。少額でも毎月動いている袋は再開しやすく、大きく設定して二か月で止まった袋は戻ってきません。まず続く額で仕組みを作り、実績が三か月たまってから金額を上げるほうが確実です。

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