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ホーム研究が示していること

支出の記憶は、どれくらい外れているのか

先月いくら使いましたかと聞かれて答えられる人は多くありません。それは記憶力の問題ではなく、思い出して答える方式そのものに構造的なずれがあるからです。米国の公的な家計調査の二つの方式を比較した研究は、記録の取り方によって結果が体系的に変わることを示しました。米国の調査を対象にした分析で、日本の家計調査を評価したものではありません。

方式が変わると、結果が変わる

米国の消費支出調査には二つの方式があります。調査員が面接して思い出してもらう方式と、一定期間その場で書き留めてもらう家計簿方式です。両方を国民経済計算の数字と突き合わせた分析によると、主要な支出項目については面接方式のほうが良好に捉えられており、家計簿方式は支出のばらつきが大きく、ある費目について支出ゼロと回答される割合が高くなっていました。同じ人の同じ生活を測っているのに、測り方で結果が変わる。この一点だけでも、自分の記憶で家計を判断することの危うさが分かります。

過少報告は、どの方式にもある

同じ分析は、所得の高い層が調査に十分に含まれていないことと、所得と支出がともに過少に報告される傾向があることも示しています。つまり、意図的に隠しているという話ではなく、思い出して答える形式でも、書き留める形式でも、実際より少なく出やすいということです。家計に当てはめると、月末に「だいたいこれくらい使ったはず」と振り返った金額は、実際より少ない可能性が高いということになります。使途不明金という言葉が家計相談でよく出てくるのは、記憶と現実の差がそもそも構造的に生まれるからです。

この分析は米国の調査であること

念のため明記します。これは米国の公的統計を対象にした分析で、日本の家計調査の精度を評価したものではありません。日本の統計については、総務省統計局が公表している家計調査の方法と結果を確認してください。ここから持ち帰れるのは日本の数字ではなく、測り方の問題が普遍的に存在するという事実のほうです。記憶で測ると外れる。その場で記録すると別の癖が出る。どちらも完璧ではないという前提で、自分の家計にどちらを使うかを決める必要があります。

家計の記録に何を求めるか

この研究群を家計に翻訳すると、目的をはっきりさせるべきだという話になります。統計として正確な総額を出すことが目的なら、記録方式の癖まで気にする必要があります。しかし家計の目的はふつう、判断できる状態を作ることです。だとすれば、一円単位の正確さより、費目ごとの残高がいま見えているかどうかのほうが重要になります。袋分けが手入力と相性がいいのはここで、記録の主目的が集計ではなく、使う前に残高を確認することだからです。あとから思い出す必要のない形にすれば、記憶の精度は問題ではなくなります。

出典

以下の出典はすべて実際に取り寄せて確認しています。内容は、出典が述べているとおりに書いています。

よくある質問

レシートを全部保存すれば正確になりますか?

総額の精度は上がりますが、続かなければ意味がありません。研究が示しているのは、記録の方式によって結果が変わるということであって、完璧な方式があるということではありません。家計の目的が判断なら、全部を捉えることより、費目ごとの残高が使う前に見えていることを優先するほうが実用的です。

月末にまとめて記録してもいいですか?

記憶に頼る方式は少なく出やすいという傾向がある以上、まとめて思い出す方式は精度が落ちます。加えて、月末にまとめる形では、使う前に残高を見るという肝心の作業ができません。記録の目的が把握なら都度、集計だけが目的なら後でも構いません。

日本の平均的な支出額を知りたいのですが。

このページでは示しません。日本の統計は総務省統計局の家計調査で公表されているので、そちらを確認してください。なお他人の平均は目安にはなっても、自分の家計の判断材料としては、自分の過去三か月の実績のほうが常に正確です。

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