記録する家計簿と、先に決める予算
家計簿は起きたことを記録して分類する道具です。予算は月が始まる前に上限を決めて、実際の支出をそれと比べる道具です。今持っているものがどちらかは、2つの質問で分かります。月が始まる前に金額を聞かれたか。払う直前に残りが見えるか。日本では記録側の道具が既定になっているので、多くの人は記録を完璧にすることで解決しようとして、行き止まりに当たります。ただし最初の1か月は記録が正解です。自分の実額を知らないまま決めた上限は、必ず外れます。
ふたつの定義を、混ぜずに置く
家計簿の仕事は後ろ向きです。支出を捕まえて費目に振り分け、何が起きたかの絵を作る。自動で取り込もうが手で書こうが、出てくるものは報告です。予算の仕事は前向きです。期間が始まる前に費目へ金額を割り当て、その期間の支出を割り当てと比べる。出てくるものは上限と残高です。袋分けは後者のやり方のひとつで、割り当てるのが目標の割合ではなく、すでに手元にある実際のお金だという点が特徴になります。ほとんどの道具は両方を少しずつやります。両方をきちんとやるものは、ほとんどありません。
見分ける2つの質問
アプリの説明文では、この2つはわざと混ぜて書かれます。人が検索するのは家計簿という言葉で、作りやすいのは記録のほうだからです。だから名前では判別できません。道具のほうを試してください。ひとつめ、それは月が始まる前にあなたに金額を聞きましたか。それとも、お金を使ったあとでグラフを見せ始めましたか。ふたつめ、いま払おうとしているその瞬間に、残りいくらかを見せてくれますか。それとも開いて報告を読みにいく必要がありますか。両方に落ちるものは、予算という名前のついた記録の道具です。それ自体は悪いことではありません。分かって使っている限りは。
日本では、記録側が既定になっている
家計簿という言葉には百年分の重みがあります。全部の品目を、毎日、細かい費目に分けて書く。その期待値のまま道具を選ぶので、記録がどんどん精密になり、精密になるほど作業になり、作業になるほど続きません。そして続いた人でも、たいてい同じ場所で止まります。今月も食費が多かった、という結論が毎月出るだけになるからです。ここで足りないのは記録の精度ではなく、月の頭に上限を決めて、払う前にそれを見る手順のほうです。費目を増やすほど家計が分かるという感覚は、記録の道具としては正しく、予算の道具としては逆になります。
1か月目は、記録が正解です
ここは私たちの商売にとって都合の悪い順序ですが、書いておきます。自分の本当の食費を知らないまま食費の上限は決められません。頭の中の数字はまず実額より低い。想像で決めた上限は2週目で破れ、破れた人は「自分には予算は無理だった」と結論します。だから最初の1か月は上限なしの記録が正解です。全部つけて、費目はざっくりでよく、出た数字はそのまま受け取ります。恥ずかしい数字が出たら、それが記録の唯一の仕事をした証拠です。この1か月は準備運動ではなく、2か月目の入力データそのものです。
記録だけだと、なぜ頭打ちになるか
問題は記録が不正確だからではありません。気づきが薄れるのと、報告が遅れて届くからです。最初の数週間は費目の合計を見るだけで驚きがあり、行動が勝手に変わります。3か月目には数字が見慣れたものになり、グラフはニュースではなく確認になります。そして月初に読む数字が、20日に済ませた買い物を変えることはありません。記録はやったことを教えてくれますが、これからやることについては何の意見も持ちません。助けが要るのは、いつだってまだ起きていない判断のほうです。これは表示の工夫では越えられない、構造の限界です。
1か月目は記録、2か月目に袋へ
同じ入力をそのまま両方に使えます。1か月目は全部記録して上限は決めない。目的は費目ごとの実額をひとつ持つことだけです。2か月目は、その実額をもとに手取りを袋へ割り当てます。想像ではなく去年の自分の数字が出発点になるので、初回から大きくは外れません。そして超えやすい袋を2つだけホーム画面に置き、払う前に見えるようにします。記録のやり方は1か月目と何も変わりません。変わるのは、記録する前に上限が決まっているという一点だけです。この一点が、報告を判断に変えます。
よくある質問
家計簿と予算、どちらから始めるべきですか。
この順番で両方です。食費と外食の平均額を今すぐ言えないなら、まず1か月の記録が必要です。今の時点で決めた上限はただの当て推量で、しかもたいてい低すぎます。実額が手に入ったら、記録だけの価値は急に下がります。終わった買い物は報告では変わらないからです。そこで上限に切り替えます。この切り替えの瞬間がいちばん効くところで、片方しかできない道具がいずれ買い替えになる理由でもあります。
ひとつのアプリで両方できますか。
できます。記録を持ちながら、その記録に対して上限を効かせていればそうです。私たちのアプリはそう作ってあります。使ったら記録する、これが家計簿の側。袋の残高は保存されている数字ではなく、記録された取引から毎回計算される、これが予算の側です。見分け方は、上限と記録が同じデータから出ているかどうか。予算を別の場所で管理させる作りだと2つは必ずずれ、そして先に更新をやめるのは予算のほうです。
エクセルの家計簿は、記録ですか予算ですか。
作った人次第です。明細を貼り付けて集計しているなら記録、予定額の列の隣に実績額の列があるなら予算です。表計算はどちらも得意で、ただ一点だけ苦手なことがあります。払おうとしているその瞬間に開いていられないことです。アプリを選ぶ理由として本物なのは、実質そこだけ。すでに回っていて、十分な頻度で見ているなら、そのまま続けてください。動いている仕組みは、新しい仕組みより強い。
どのくらい記録してから上限を決めればいいですか。
最低でも給料1回分、できれば1か月です。月単位の引き落としが1周するからです。支出の波が大きい人は2か月あるとより正確になりますが、たいていの人はその前に飽きます。完璧でない上限で始めるほうが、記録を続けたまま何も決めないより前に進みます。大事なのは、いちばん揺れる費目、たいていは食費と外食が、たまたま変な1週間ではなく平常の姿を見せるまで待つこと。あとは1か月ごとに直します。最初の設定はどうせ少しずれています。
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