サブスクリプションの惰性:解約されないことが売上になる
使っていないのに解約していない定額サービスは、多くの家計にあります。米国の大手決済ネットワークのデータを使った研究は、更新に能動的な手続きが必要になった月に解約が大きく増えることを示しました。つまり、続いている理由の相当部分は満足ではなく摩擦だということです。研究は米国のデータに基づくもので、日本の利用者を調べたものではありません。
解約は、更新を意識させられた月に起きる
研究者たちは、米国の大手決済ネットワークの取引データを使って、定額サービスの継続と解約のパターンを分析しました。鍵になった観察はこうです。カードが差し替えになり、支払いを続けるために利用者が能動的に手続きをしなければならなくなった月には、解約率が大幅に高くなっていました。サービスの中身も価格も変わっていないのに、判断する場面が一度作られただけで結果が変わるということです。裏を返せば、それ以外の月に続いているのは、続けたいと判断した結果とは限らないことになります。
摩擦が売上のかなりの部分を作っている
研究は、注意の欠如と解約の手間という二つの摩擦が、同じ加入者数のもとで企業の収入をおよそ2倍にしていると推定しています。これは非難というより、構造の記述です。自動更新は利便性のための仕組みでもあり、多くの利用者はそれを望んでいます。ただし同時に、判断の場面が消えるという副作用を持つ。家計の側から見ると、判断の場面が消えている支出が固定費の中に積み上がっているということになります。金額が小さいものほど、判断の場面が来ないまま長期間続きます。
この研究は米国のデータであること
念のため書いておきます。分析対象は米国の決済データで、日本の利用者や日本のサービスを調べたものではありません。日本で何件が使われていないといった数字を、ここから作ることはできません。ただし日本には固有の事情もあります。クレジットカードの支払いは締め日と支払日を経て翌月にまとめて引き落とされるため、個別の定額サービスの請求が明細の中に埋もれやすい。さらにキャリア決済やアプリ内課金の形をとるものもあり、どこで契約したかを本人が思い出せないことがあります。
判断の場面を、自分で作る
対処は研究から素直に導けます。摩擦によって判断が消えているのなら、判断の場面を自分でカレンダーに置けばいい。年に一度か二度、契約中の定額サービスを全部書き出す日を決めます。ここで重要なのは、一つずつ判断しないことです。一件ごとに見ると、どれも金額が小さいので残す判断になります。全部を書き出して合計を出し、その合計額を見てから残すものを決める。袋分けで言えば、これらは固定の袋に入るので、固定費の合計が手取りに対して何割かという形で毎月見える状態にしておくと、増えたときに気づけます。
出典
以下の出典はすべて実際に取り寄せて確認しています。内容は、出典が述べているとおりに書いています。
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Selling Subscriptions
— American Economic Review, 2025
米国の大手決済ネットワークのデータを分析し、カードが差し替えになり更新に能動的な手続きが必要になった月に解約率が大幅に高まることを示した。注意の欠如と解約の手間という摩擦が、同じ加入者数のもとで企業の収入をおよそ2倍にしていると推定している。
よくある質問
どのサービスを解約すべきですか?
個別のサービスについては扱いません。手順だけが有効です。契約中のものを全部書き出し、月額を合計し、その合計を見てから残すものを選ぶ。一件ずつ判断すると、たいてい全部残ります。合計を見るという順序が効きます。
年払いのほうが得ですか?
支払総額の話は契約ごとに違うのでここでは扱えません。家計の設計としては、年払いは判断の場面が年に一度になる代わりに、その月の負担が大きくなります。年払いを選ぶなら、月額に割った金額を特別費の積立に入れておくと、請求月に慌てません。
無料期間のあるものはどう管理しますか?
無料期間の終了日をカレンダーに入れ、その日を判断の場面として使ってください。研究が示しているのは、判断の場面が作られた月に解約が増えるということです。場面がなければ、続けるという結果だけが残ります。
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